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ssh367 自殺報道と児童虐待報道への疑念〜「少年犯罪データベースドア」より [メディア論]

 ssh74で紹介した「少年犯罪データベース」を再度紹介させていただきます。
 なぜ再度紹介するのか?理由は2つ。
 一つは、ssh74で紹介して以降も、中央メディアを中心とするもっとも発言権の強い人々が、相も変わらず事実もデータもきちんとチェックしないウソ報道を繰り返しているから。
 いま一つは、主催者の管賀江留郎氏の積年の主張をきちんと確認しておきたいから。

 最初に、「少年犯罪データベース」のブログ部門である「少年犯罪データベースドア」の最近の記事からグラフと記事を引用紹介します。

 
 まず、「20代〜30代自殺率、最悪」という読売新聞2010年5月13日付記事についての記事。
 
◆◆この過去最悪というのはあくまで1978年以降の話です。それ以前も警察庁は自殺統計を記録しているのですが、20歳未満、20~39歳、40歳以上、という三段階の大ざっぱな分け方しかしていません。
  ですが、今回のニュースは「20~30代自殺率が最悪」ということで、ちょうどその分類でも比較できるのでやってみました。
 手元には昭和30年代の資料しかないのですが、そのなかで一番20~39歳の自殺数が多い昭和33年は、警察庁『犯罪統計書』によると10871人、年代別の人口10万人当たりに占める自殺者の割合(自殺率)を計算してみると37.14となります。
 今回警察庁が発表した平成21年の20代と30代を合わせると8264人、自殺率25.26ですから、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の舞台となった昭和33年はいまよりもずいぶん多かったわけです。
 なお,昭和33年は団塊世代がまだ二十代になってませんし、こちらは団塊ジュニアを擁しているので、20~39歳の人口は現在のほうが多いですから念のため。
 
 自殺原因を見ますと、昭和33年は非常に豊かな時代でしたから貧困は10871人中わずかに237人、病苦は一割ちょいの1595人、失恋871人、一番多いのが「厭世」による2537人なんですな。理由もなくただなんとなく世の中が嫌になって死にたくなったという、豊かなる時代の贅沢病です。呑気な時代ではありました。
 ちなみに19歳以下は2544人で自殺率6.7でしたから、平成21年の565人、自殺率2.4を圧倒しております。総数は21831人から32845人に増加、つまりはこの自殺世代である50歳代60歳代が相変わらず圧倒的な自殺を続けて全体を押し上げてるわけで。(以下略)◆◆

 次に、児童虐待問題に絡んで、0歳児と1〜9歳児が殺害された件数のグラフ。
(グラフを見るときは、小学校の算数で習ったように、線の形だけでなく座標や数値にも気をつけましょう。)
幼児他殺被害者件数.jpg

数が減っているのは少子化のせいだろう、とお思いの方のために、人口比(0歳児と1~9歳の人口10万人あたりの殺人被害者数。ただし0歳児人口の統計がないため出生数で代用。)
幼児他殺比率0歳児.jpg

 
幼児他殺比率1〜9歳.jpg

 
上記2つのグラフには殺人全体のデータと明確な違いがあります。それは一旦減少し始めた数字が1970年代に再び上昇し、1980年前後には最悪の昭和30年前後と同水準に悪化していること。殺人全体はsshでも繰り返し指摘しているように、昭和30年代をピークに激減していますから。
他殺被害人数と人口比.jpg
 殺人件数と自殺件数と10歳未満の殺人被害件数、この3つの推移から推察できるのは、戦後一貫して、ある特定の世代が大量に関与している可能性です。

 これは管賀氏も指摘しているのですが、つまり団塊。
 彼らが青少年だった昭和30年代は青少年の凶悪犯罪と自殺が多く、
 彼らが親世代となった昭和50年代には子ども殺しが多く、
 現在は高齢者の犯罪と自殺が多い。
 団塊、怖いです。私も団塊批判ばかりしているとそのうちキレた高齢者に襲われるかも。くわばらくわばら。


 ところで、管賀氏自ら繰り返し述べいますが、氏は犯罪そのものに興味はなく、統計も好きなわけではありません。
 彼が少年犯罪データベースをスタートした理由はこの記事に詳しいですが、要は本来この仕事をやるべき人たちがいつまでたっても着手しないから、事の成り行き上、仕方なくやっている。

 犯罪や事件関係の報道や論考はとにかく事実誤認に基づくご感想レベルのものばかりで、まったくアテになりません。学者も信用なりません。犯罪学者を名乗る大学教授ですらウソッパチのデータを平気で使います。

 殺人のような大きな事件は、無限にあるわけじゃありません。特に最近は年間1000件程度にか発生していません。だから、警察庁の資料や過去の新聞記事などを丹念にチェックして、これらの事件をすべてピックアップし、何年何月何日にどこで誰がどうやって誰をなぜ殺したのか、ということをすべて並べ上げることは可能です。一人では大変ですが、大学の研究室や行政の部署や、あるいは新聞社や出版社のプロジェクトとしてやれば、戦後だけなら1~2年で完成するでしょう。百科事典の編纂よりはラクなはずです。

 事例を全部拾ってデータベース化して、それを誰もが閲覧できるように整備する
 犯罪について考察したり対策を考えたりしたいのなら、まず最初にやるべきことはこのことのはずです。
 なのに、なぜ、学者もジャーナリズムもそれをやらないのか? 
 管賀氏が一番求めているのは、これです。

 一つの「論」を主張するには、きちんとした根拠となる資料が必要です。それは実験結果であったり、データであったり、文書であったり、取材結果であったり、いろいろです。
 そして、一番労力が必要なのも、その部分です。つまり調べること

 ちゃんとした結果が出るまで実験を繰り返す。
 丹念に数字を拾ってデータ化する。
 図書館の大量の文書に目を通し、求める資料を探す。
 数多くの人を取材し、信憑性の高い情報を得る。
 まず、調べなきゃいけません。
 って、かくいう私が他人が苦労して作ったデータベースを紹介しているだけなんですけど。


 なお、現在管賀氏は『戦前の少年犯罪』の続編を執筆中です。執筆にあたって、昭和30年代の事件で一部詳細のわからないものがあり、情報を求めています。図書館へ行って該当都道府県の該当年の新聞1年分に目を通すという作業です。すでに何件かは協力者から有効な情報が寄せられているようです。「調べる」ことに挑戦したい方、特に社会学を学ぶ大学生の方はやってみてはいかがでしょうか。

戦前の少年犯罪

戦前の少年犯罪

  • 作者: 管賀 江留郎
  • 出版社/メーカー: 築地書館
  • 発売日: 2007/10/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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コメント 8

きゅんぱち

なるほど、おっしゃるとおりだと思いますし、大変興味深い考察です。
このテのデータは、公表していないだけで、生命保険会社あたりが独自に情報収集して保有している可能性があるでしょうな。
自殺についてはかなり昔から、不景気となると身内による他殺であるにもかかわらず病気や自殺を装って保険金をふんだぐらんとするヤカラはいて、生保会社は対応を迫られていたわけですから、こういうデータ、持っていないはずないですよね。
すなわち、自殺他殺に係る理由項目の洗い出しから、周辺情報としての少年犯罪に係るデータをもっていると思います。
一方、大学入試の英語長文読解では話題テーマ別として
「自殺の社会学」
と題し、いろんな大学で出題されましたよね。
by きゅんぱち (2010-08-16 02:05) 

HIROMI

興味深く読ませていただきました。少年犯罪についてはわたしも関心を寄せています。自分が今やっていることは、間違いではないのかふりかえる必要を感じていますし。
shiraさんの、物事を追究していく姿勢に感動しました。
by HIROMI (2010-08-16 07:55) 

小父蔵

 政府の統計とかけて、ビキニの水着ととく… そのこころは、一番見たいところを隠すから。。。というのがあったような。
 所詮、御用学者や提灯記事を書くしか能がないマスゴミはあてにはできないのだと思います。彼らは、わざと間違ったデータを垂れ流す場合があるので要注意ですね。
by 小父蔵 (2010-08-16 19:06) 

uncorrelated

管賀江留郎氏も、データは正しく見ているわけではないようですよ。

「少年犯罪データベースドア」で提示されているデータは、9歳以下の児童の他殺者数を元に議論しているのですが、これは親権者による児童虐待の結果であるかは強い根拠がありません。

平成21年版犯罪白書によると、2008年の児童虐待(被害者が高校生以下が分類される)による殺人の検挙件数は45件で、被害者が13歳未満の殺人の検挙件数は115件で、両者は半分も一致しないのです。

また、2000年と2008年で、通報件数(児童虐待相談対応件数)は約2.4倍、保護件数(児童福祉法28条事件)は約1.4倍に増加し、検挙件数も2000年に186件であったものが、2007年以降は連続して年間300件を超えていて、殺人数も横ばいか増加です。
近年、観察されている増加傾向に対して、「少年犯罪データベースドア」は言及が無いので、管賀江留郎氏は、都合の悪い数字を無視しようとしているように思えます。
by uncorrelated (2010-08-17 10:39) 

shira

>きゅんぱちさん、nice&コメントありがとうございます。
 「このテのデータ」ですが、どこにもきちんとしたものがないようなんですよ。少なくとも誰もが利用できるように公開されているデータベースはないみたいです。
>HIROMIさん、nice&コメントありがとうございます。
 今の日本はとにかく犯罪が少なくて治安のいい国です。これはきちんとおさえておきましょう。テストに出ます(冗談じゃなくて、大学入試には出ます)。
>ナビパさん、niceありがとうございます。
>ムッシュさん、niceありがとうございます。
>小父蔵さん、nice&コメントありがとうございます。
 誤用じゃなくて御用学者というのは本当に困り者です。学者を自認するのなら、まず資料作り・資料集めをしっかりやって欲しいです。
>ぶりごろたんさん、niceありがとうございます。
>tyuuriさん、niceありがとうございます。
>みうさぎさん、初めまして。niceありがとうございます。
>uncorrelatedさん、初めまして。コメントありがとうございます。
 uncorrelatedさんと管賀さんのやり取りは「少年犯罪データベースドア」で見ていました。
 uncorrelatedさんのご指摘は「これは子どもの殺人被害データであって、児童虐待のデータとは言えないのではないか」ということですよね。そのご指摘は合理的だと思いますが、私はこれに関してはさほど大きな問題ではないと考えています。
 確かにデータの読み取りメソッドからすれば、10歳未満の子どもの殺害数=児童虐待とは言えませんし、死に至らない虐待は管賀さんのグラフには含まれていません。
 ただ、管賀さんのデータベースは新聞報道を一件一件拾い上げて作成されたもので、彼はいつどこで誰が何をしたのかまですべて読んでいます。その結論として大半が親による犯行であるとしているのですから、これは信頼していいと思います。彼のデータベースは自ら収集して作り上げた自製のデータベースです。他人が作ったデータを読み取るのとは意味合いが違うと思われます。

 correlatedさんのサイトを「ちょい見」させていただきましたが、大変に緻密で示唆に富んだサイトでした。最新記事にある「厳罰化が児童虐待を防ぐとは思えない」という意見には私もまったく同感です。

 ともあれ、貴重なご指摘ありがとうございました。
by shira (2010-08-17 21:00) 

ayu15

 悲観論思いだします。問題起きるたび派手に?報道して被害者心情のみあおり、対策が「目の前の現実」に対応する「滅私奉公」の各機関?

 レミングの群れ現象にみえます。

のけものにしたり、監視強化・厳罰化で警察国家方向はうれしくないです。

行政企業だけでなく、支援必要な人に「ボランティア」精神で、私たちもなにか手を差し伸べられたらと思います。
by ayu15 (2010-08-18 19:25) 

shira

>あゆさん、nice&コメントありがとうございます。
 悲観論者が悲観論にひたれるのは、当事者意識がないからです。自分も当事者であり、責任の一端を担っているという認識があれば、いつまでも悲観論にひたっている場合じゃないと思えるはずです。
by shira (2010-08-18 22:03) 

shira

>yamamotoさん、niceありがとうございます。
by shira (2010-08-26 23:43) 

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ssh373 sshに検索ワードでようこそ~2010年8月編(ssh-スーパー小論文ハイスクール 2010-09-06 22:12)

 9月になりましたので、「検索ワードでようこそ」8月分の発表です。 まずはマトモランキング 1位:「小論文」205件  2位「児童虐待」34件  3位「読解力」33件  4位「テスト」32件 5位:「グラフ」31件  6位「パンチラ」23件  7位「志望理由」19件  8位「秋葉原」18…[続く]

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